福岡高等裁判所 平成6年(う)106号 判決
漁業法66条1項によれば,小型機船底びき網漁業を営もうとする者は,船舶ごとに都道府県知事の許可を受けなければならず,同条2項において,「小型機船底びき網漁業」とは,総トン数15トン未満の動力漁船により底びき網を使用して行う漁業をいうと規定されている。そして,関係証拠によれば,被告人は,右県知事の許可を受けないで総トン数14トンの動力漁船により,網口開口板を取り付けたごち網を使用して,原判示のとおり,鯛,アカムツ,クロサギ等を採捕したことが認められる。
所論は,被告人が使用した網はごち網であって底びき網ではないから,同条に違反しないというのである。
しかしながら,関係証拠によれば,ごち網漁業とは,楕円形の一枚の網地が,縮結によって袋状となった網とその両端に結着された曳綱とからなるごち網を使用して,曳綱の包囲形を狭めることによって魚を威嚇しながら,網の魚捕り部内に追い込み,網目に刺させたり絡ませたりして漁獲する漁法をいい,一方,底びき網漁業とは,一袋両翼からなる袋網と曳綱とからなる底びき網を海底に接着させ袋網の両翼と曳綱で海底方向に曳行して,その流水抵抗により袋状の形を形成させて,漁獲対象物を網内に入れるか,あるいは駆り集めて漁獲する漁法をいい,そして,ごち網も底びき網も漁具は袋網と曳綱から構成されるところ,近年のごち網の袋網は,両端を著しく伸長した構造となっていて,外見上,又,能力上も底びき網との区別は判然としなくなって来ており,ごち網の袋網は底びき網としても容易に使用できるものとなっていることが認められる。
そして,関係証拠によれば,被告人は,いわゆるごち網であっても,底びき網として容易に使用できる脅しのない網を使用していたこと,ごち網漁では全く使用することがなく,小型機船底びき網に装着されて初めて効能を発揮する網口開口板を装着していたこと,被告人は,遊泳力があってごち網漁法では補獲されにくいクロサギを大量に捕獲したことなどを併せ考えると,被告人は,網を曳行する漁法,すなわち,底びき網漁を行ったものと優に認定できるというべきである。